メディセル臨床発表会2016で発表予定だった新しい使い方

諸事情で欠席となってしまったMJカンパニーのメディセル臨床発表会2016。発表準備はそこそこ進んでいたので、せっかくなので大雑把に公開します。一番最後の実験映像は、メディセルを使う人にはとっても大切です。ぜひ、ご覧ください!
(欠席になってしまった理由は一番最後に)

背景

K7″ではメディセルという器械を施術に使っています。これはただ単に吸引圧を身体の表面にかけられる器械です。使い方によっては、効果的に身体の変化を引き出せます。

このメディセルの普及のためか、販売会社のMJカンパニーでは何年か前から臨床発表会という、現場でどう使われているのか情報シェアのための発表会を開催しています。僕も昨年くらいから発表の打診がありましたが、特に発表内容もなかったので断っていました。

昨年末にちょっとしたきっかけがあり、そこから独自の使い方をはじめ、そこそこ効果が出てきていると感じていたので、今回の発表依頼はお受けしました。

発表内容

従来のMJカンパニーより教わるメディセルの使い方とは違う、K7″での使い方を紹介します。

たぶん、多くのメディセルユーザーの使い方は、ローションかオイルを肌に塗り、そこに吸引圧をかけたヘッドでこするという使い方だと思います。当初、K7″でもこの使い方をしていましたが、どうも僕が期待しただけの反射具合の改善、動きのスムースさ、お客様の「軽い!」という反応などが得られませんでした。そのため、あまりメディセルを使っていませんでした。

昨年末に東京で開催された、通称「すっぽん療法」。このセミナーに参加して衝撃を受けました。「ローションを使わなくてもいいんだ、こすらなくてもいいんだ」って。ただ、そのままではK7″での使い方にはフィットしなかったので、そこから思いついたのが今回紹介するK7″流メディセルの使い方です。

やり方

やり方としては、吸引状態のヘッドを筋膜リリースをかけたいポイントに置き、皮膚の固定をします(ローションやオイルやその類は不要)。その状態で、固定皮膚下の筋肉をお客様自身の運動により動かします。どのように動かしたらいいのかは、セラピストが指示します。お客様自身による運動が難しい場合には、セラピストが動かしてあげてもよいです。ただそれだけです。難しいとすれば、リリースポイントを探すことです。わからなければ、全体に対して掛けてしまえばいいと思います。ここは、今後の課題。
映像はちょっと古めで、僕がお客様の脚を誘導していますが、現在はお客様自身にブラブラしてもらっています。

原理

ひとまず、筋膜とか考えないで、サランラップのような膜を2枚イメージしてみてください。サランラップって結構くっつきやすいですよね。なので、これと同じことが身体の中で起こったら問題です。治療業界ではこのようなことを「癒着」という言葉を使いますが、それはおかしいと現役整形外科医の方がブログに書かれています(筋膜リリース(筋膜はがし)に対する考察)。筋膜同士の滑りが悪い、滑走不全の方が適切だと考えます。

この滑走不全を解消していくのが今回の目的です。実際にはイメージしていただいたサランラップを身体の中の筋膜に置き換えて考えると完全に乾ききっていることはまれで、多少は体液で濡れていると思われます。だから完全に固着しちゃうようなことは滅多に起きないと思います。ただ滑りは悪いでしょうから、動きはぎこちなくなったり重く感じたりするでしょう。

この状態を解消するために筋膜リリースをするわけですが、一般的にはストレッチ系とマッサージ系があるようです。K7″ではどちらとも違う方法をとります。身体の外側面は吸引状態のヘッドを当てておくので位置固定です。そして、内側は運動をさせるのでこれで2枚の膜に滑走するような動きが生じます。

なぜ滑走不全が起きるのかを考えると、該当する場所では2枚の膜間の体液不足が起こっていると考えます。つまり潤滑油が不足している状態です。そこで、上のような作業で2枚の膜をこする動きを作り出します。そして、充分に潤っているところから不足しているところへ送り込む感じです。例えでいえば、ドアを開けるときに蝶番がギーギーいっているとして、そこに油をさす作業です。油をさしてドアの開閉を何回かすれば油が回ってなめらかに動くようになりますよね。それと同じ。

この原理で筋膜リリースがうまくいくとすれば、一般的に行われているストレッチ系やマッサージ系の筋膜リリースといわれているものは、どのように効果が出ているのか不思議です。2枚の膜の間に体液が流れ込むということは考えにくいです。また、従来のメディセルでの施術でも同じです。2枚の膜間になにかしらの物理的な刺激というか動きが起きなければ、たとえ筋膜をいったんは浮かせられたとしても身体はあまり変わらないように思います。だから全然ではないにしろ、あまり効かなかったのだと思います。

今のところ、この考え方じたいが仮説であって本当にこのように起こるかはわかっていないので、ただの妄想かもしれません。

実験

今回の臨発では、最初に発表依頼を受けたときに、やったことをなるべく数値化してくれと言われていました。また、途中から指導をしてくださる(たぶんえらい)先生が出てきてくださり、学術的にしていくんだみたいな話になり、とにかく数値化→統計処理みたいなことを言われ始めました。

今回の僕の発表テーマは器械の使い方なので、そんなに数値化するようなことでもないのですが、どうしても数値化せよということなので、「従来からの手法(オイル+吸引+こする)と比べてどうなのよ」というあたりを数値化して比べることにしました。かなり無理やりプランだとは思います。

実験を行うにあたり、新旧手法の差がわかりやすい症状を考えました。そこで思いついたのが、うちでも肩こり系の人に多い症状です。それは、両腕を挙上(万歳)するときに、真横より後ろ側から上げていこうとすると水平か少し上くらいでロックするように上がらなくなるというもの。この症状を持つ人たちの肩前方、筋肉的に言えば三角筋前部線維付近のリリースをすると一気に上がる場合が多いという経験値があるのでそれを使います。

右腕にはK7″流の新手法、左腕には従来手法を用いて、変化を比べてみることにします。ここで、左右の違う腕で実験をすることに意味があるのかとか、妥当性があるのかとか言われましたが、まずはやってみます。そんなことはやってみなければわかりません。やってみてダメならほかの評価方法を考えることにします。

で、実験のための施術は以下の映像の通りです。

実験結果的には、データの採り方に不備があったり数字に疑問点があるとコメントをいただいたので、ここでは発表公開しませんが、実際問題、可動域的にはどちらもそれほど大きな変化はないです。現場的には同じといっても過言ではありません。(この意見が、数値数値という方々に反感を買うのは承知の上です)

ただし、スムース感に大きな差が出ました。スムース感は数値化が難しかったので評価をしていませんが、9人中7人が新手法にスムース感を感じ、一人は症状自体が変化しなかったためわからず、残りの一人は旧手法の方がスムースだったと感じています。大多数は、K7″の手法にスムース感を感じているといっても間違いではないと思います。これだけでも、K7″流の手法に優位性があると個人的には思っています(主観的)。

参考までに、一番わかりやすい例を映像でお見せします。施術後は、左腕も上がるは上がりますが、とっても重い感じです。ただ、ほかの人はここまで顕著な現象は出ていません。一番わかりやすい例です。

新旧手法によるスムースさの違いについての考察

同じ器械を使って同じ症状に対して施術をしたのに、被験者が施術後に左右の腕にスムースさの違いを感じたのは、作用機序に違いがあるからといえそうです。要は、効く原理が違うんだと。なにがこの違いを生むのか考察しました。

僕の施術のベースとなる考え方に、「ヒトは刺激に対して何らかの反応をする」というものがあります(関連記事:治療を簡単にいうと「刺激に対して反応を上手に引き出す」こと)。非常に広義な例となりますが、叩けば痛いとか、大きな音を浴びせればうるさいと感じるとか、「バカ!」っていわれたらむかつくとか、なんでもいいのですが、とにかく刺激に対して何らかの反応をするでしょ、ということ。では、従来式のメディセル施術では、どんな刺激が身体に入るのかを考えてみます。思いつく範囲ではこんな感じ。

  • 接触(ヘッドが触れる)
  • 吸引
  • こする
  • ローション(オイル)

というところでしょうか。これを一つ一つ実験してみました。すると、面白いことがわかりました。
では、実験映像をご覧ください。

この実験においては、ということではありますが、可動域を変化させる要因となった刺激は、ローションでした。「吸引+こする」では変化は出ませんでした。ということは、皮膚吸引で効くとは言えないし、筋膜リリースをしているとも言えないということになりそうです。ただ、この実験も、自分自身で行っているので、信ぴょう性がないと言われればその通りです。興味のある方は、是非ローションを塗っただけで身体が変わるかどうかを実験してみてください。

この実験以外、ほかの部位や症状ではどうかを考えると、もしかしたら「吸引+こする」で効果が出ている場合もあるかもしれません。ただ、ローションなりオイルを使っている場合には、どちらの刺激で効果が出ているかを分けて考える必要あります。もちろん、日常的な施術ではどんな刺激が効果を出しているかなんて考えながらする必要なく、とにかく効果が出ればいいのですが、人に伝えるときに「皮膚吸引が効いている」と言ってしまうと「嘘を教える」可能性もあります。

ちなみに、もう少し実験をしてみました。なぜか金属ヘッドの「ニードル」と呼ばれるものを使った場合には、ローションをつけなくても身体は変化したので、別の作用機序がありそうです。ただ、個人的にはそういった使い方は今現在していないので、あえて評価や考察をしようとは思っていません。実際に行っている方が本当のところを知りたかったらぜひ追及してみてください。

科学的に評価するということ

今回、発表依頼を最初に受けたときには「できるだけ数値はしてくれ」とは言われていました。「できるだけ」という部分と、単なる器械の使い方だからなぁ…、ということで、それほど意義や意味を考えていませんでした。途中から「学術的にするんだから…」と言われ、自分なりに昔勉強したことを思い出したり、新たに本を何冊か読んで勉強しなおしてみました。

そして、僕なりに理解した科学的根拠を示すということは、結局「思い込みをなくす」ということに集約されると考えました。統計処理は単なるツールであって、それが目的ではないと思います(最終的には統計を通すことになるのだろうけど)。自分のやっていることを思い込みだけで「正しいんだよ」と主張するのではなく、客観的に評価し「正しいんだよ」と自分も他者も納得するためのものだと考えました。

そのために、どんなことを考え、どんなことをどのように実験したのか、追試もできるように明らかにすることが大切なんだなと大きな学びがありました。

今回の発表に関し、最初に過去に発行された抄録を見本としていただきました。その実験ではメディセルによる皮膚吸引で肺活量が上がるというもの。ただ、僕がいくら読んでも、ローションまたはオイルを使ったのかどうかはわからないし、こすったのか固定したヘッドを移動させたのかもわかりません。僕の実験ではローションで身体は変化することを確認しているので、ここはとても大きなポイントだと思います。

今までメディセル療法において、MJカンパニーではオイルを塗って吸引したヘッドでこすることを標準的にユーザに教えてきていると思います。多分この実験も同じように行われていると思います。

なので、もしオイル塗布を行ったにも関わらず実験方法に記載されていないとすれば、実験者に「オイル塗布で身体は変わるはずがない、メディセルをかけているから吸引刺激で身体が変わる」という思い込みがあったのだと思います。オイル塗布で身体が変わることを知っていたとすれば、「皮膚吸引で…呼吸運動がスムースになる可能性がある」と締めているので、論点をずらしているように思えます。まっ、現実的にはこれはないと思いますけど…。オイルやローションなんて全然使ってないのであれば、さすがだなぁと思います。

まっ、「こういう発表の機会なんて滅多にないだろう柔整師」(by MJカンパニー)が思いつくようなことをしっかり研究活動されている人たちがわからないはずはないので、オイルなんて全然使っていないから記述がないのでしょう。

こういった読み手がいくつかの推測をしなくて済むように資料をまとめていって、客観性をデータ、統計を使って検証していくのが科学的根拠なのかなと思いました。自分で本を読んだだけなので、正しいかはわかりません。

まとめ

普段、自分がやっている仕事が、本当に正しいのかどうかを時には立ち止まって客観的に検証することはとても大切なことだと思います。ただ、歴史的には検証されたと思ったものでも反証がでてきて新しい理論に代わっていくのも普通にあることのようです。なので、現場に出ている自分たちは、客観的に検証する意義を認識しつつも、常に新しい、目の前の出会ったことのない症状のお客様の身体をよくしていくため、まず自分の経験による勘を大切にしていくことも重要だと思います。

今回は、メーカーさんに最初に教えていただいたやり方の効果に不満があり、ちょっとしたヒントをきっかけに独自のやり方を作り上げました。そして、科学的に検証をする以前に、目の前のお客様の施術前後の顔の表情が全然違うという根拠で腕を磨いていくことも不当ではないと思います。

臨発というトリガーで始めた学びで、これをその場で発表することは諸事情によりかないませんでしたが、個人的には非常に大きな学びがありました。発表に誘ってくださいまして、ありがとうございました。

欠席になった理由

1~2年前より発表依頼を受けていたのですが、ずーっと断り続けていて今回ようやく受諾しました。4月くらいから準備が始まったのですが、今までに何度もMJカンパニーとの間でトラブルが起こりました。

基本的にはコミュニケーション不足による行き違い。こちらに何の予告もなく急に予定が変更されるというもの。そのたびにクレームをし、「配慮が足らずにすみませんでした。」で終わっていました。

途中、指導をしてくださるという(たぶんえらい)先生が出てきて、「適切な指導をします」ということに。こちらから出した原稿について彼が思いついたことに赤入れはしてくださるのですが、それに対するこちらからの質問には完全スルー、一つも答えていただけませんでした。また、赤入れ内容も、僕らが指定されている文字数や期限などは全く考慮されていない感じです。どこが適切な指導なんだろう…、という感じ。

だんだんと不信感や不満がたまっていきました。

最後は発表一週間前。また何の相談もなく、突然発表内容へ介入されました。それまでに作り上げていたストーリー上、それでは満足な発表ができないので撤回要求をしましたが「決定事項ですのでご理解ください」と取りつく島もありませんでした。

発表一週間前で大幅な内容変更が余儀なくされました。これで今までの経緯もあり不信感が最大となり、このままではまともな発表はできないという判断で、欠席となりました。

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この記事を書いている人

走尾 潤Body Tuning Labo K7"代表 / Body Tuner
もともとは、富士通系のコンピュータメーカーでハード設計を11年くらいした。
ある時、運動選手のケアがしたくなり、脱サラ、接骨院開業。本格的にケア事業をするために、現在の自費治療院を開設。
今では、世界に挑戦するジュニアテニス選手やプロ選手。3時間を切る、比較的早い市民マラソンランナー、ダンサーや俳優などのケアサポートを行う。