上を目指すアスリートほど、この「意識では届かない層」を整えている

「練習しているのに、思うように動けない」
「筋トレは欠かさないが、なぜか怪我を繰り返す」

アスリートなら誰もが直面するこの悩み。その原因は、あなたの技術や根性が足りないからではなく、自分自身の「階層構造」を正しく把握できていないからかもしれません。

僕は今、治療家ですが、元はコンピューターのハード設計をしていたエンジニアです。

その世界では、システムが動かなくなったとき、闇雲に直そうとはしません。
「部品(ケーブルや基盤)自体が壊れているのか?」
「ルールの設定がどこかで狂っているのか?」
「あるいは、ソフトの動きに間違いがあるのか?」

どこに犯人がいるのかを、一つずつ厳密に切り分けて調査します。原因がわからないまま修理をするって、誰が考えても変ですよね。

この「部品・ルール・ソフト」という切り分けの枠組みを、コンピューターの世界では「レイヤー(階層)」と呼んでいます。

土台となる部品の上に、目に見えないルールが乗り、さらにその上に高度なソフトが乗る。データは常に、土台となる下から順番に積み上がって、上へと流れていくべきものなのです。

どれほど高性能なソフトを積んでも、土台となる部品が壊れたままでは動きません。この「順番を飛ばせない」というエンジニアリングの基本原則は、僕たちの身体も全く同じなのです。

このエンジニア的な「階層構造」の視点を身体パフォーマンスの世界に持ち込んだのが、今回ご紹介する「5つの階層モデル」です。

身体を構成する「5つの層(レイヤー)」

(※この階層は、僕がエンジニアの視点で身体を捉えるために独自に定義した「思考ツール」です)

身体パフォーマンスは、以下の5つの層が連動することで成り立っています。

  1. 第1層:身体のつくり(生まれ持った特徴)
    身長、リーチ、骨格。これらは変えることができない「仕様」です。大切なのは、自分の身体の特徴を正しく把握し、それをどう活かすかという視点です。
  2. 第2層:脳と身体の通信システム(無意識のコントロール)
    脳からの指令を筋肉へ届け、逆に現場の情報を脳へ戻す情報の通り道です。車でいえば、各部のネジが緩んでいないか、タイヤの向きがまっすぐ揃っているかといった「整備状態」にあたります。ここが整って初めて、持っている力を100%発揮できます。
  3. 第3層:パワー(筋力・スタミナ)
    筋力や持久力といった、身体を動かすための「エネルギー源」です。
  4. 第4層:競技の技術(スキル)
    シュート、スパイク、投球フォームといった「技」です。どれほど練習を重ねても、土台となる第2層が不安定なままだと、これらの技はなかなか自分のものになりません。
  5. 第5層:作戦・メンタル
    状況を判断し、どの技(第4層)を使ってどう動くかという「司令塔」です。

(まだ下に続きます)

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なぜ、「努力」がピント外れになってしまうのか

多くの選手は、怪我をしたり調子が上がらなかったりした際、その原因を「パワー不足(第3層)」や「作戦・根性(第5層)」だけに求めてしまう傾向があります。

「怪我をしたのは、筋力が足りないからだ」と考え、さらにハードなトレーニングを自分に課す。

しかし、もし原因が「脳と身体の通信エラー(第2層)」にあるとしたらどうでしょうか。車でいえば、オイルが古くなって動きが鈍っているときに、適切なメンテナンスをせずに「パワー不足だ」と思い込んで巨大なエンジンに載せ替えたり、ターボを装着したりするようなものです。

土台となる「制御」が追いついていない状態で、無理やり馬力(第3層)だけを上乗せすれば、その歪みは物理的な身体(第1層)を直撃し、さらに深刻なクラッシュを招くことになります。

よくあるのが、「左右のバランスが悪いから、弱い方を筋トレで鍛えよう」とするケースです。これは第2層(通信)のエラーを、第3層(パワー)の力技で無理やり帳尻合わせしようとしている状態で、まさに「ピントのぼけた努力」の典型です。

実際には、筋肉が足りないのではなく、筋肉の中にある「センサー」の感度が狂っているだけであることも少なくありません。事実、センサーの感度を正しく調整すれば、その瞬間に左右のバランスが整うことは珍しくありません。一瞬で身体が変わるのは、それが筋力不足ではなく、神経系のトラブルであったことの何よりの証拠なのです。

意識の届かない「第2層」を整える

第2層は、筋肉の中にあるセンサーや神経伝達といった、自分では意識できない「無意識の領域」で動いています。

ここは、どれほど意識を高く持ち、気合で練習を重ねても、自分自身の「意志」だけでコントロールするのは極めて困難な場所です。自分のまぶたがピクピク動くのを、根性や意識で止められないのと同じように、脳の奥底にある「動きのルール」を自分で書き換えることはできません。

どんなに腕の良いドライバーでも、ハンドルを握って走りながら「タイヤの向きをコンマ数ミリ、まっすぐ前を向くように調整する」なんてことはできません。ブレなく、本来のスピードで走り抜けるためには、一度ピットに戻り、客観的にズレを確認して「緩んだネジを締め直し、タイヤの向きを整える」という専門的なお手入れ(チューニング)が不可欠なのです。

センサーの感度を整え、脳と筋肉の間の「通信ノイズ」を取り除く。そうすることで、本来の正しい「無意識の動き」が身体に再確立されます。

「自分の身体を忘れる」という究極の自由

この第2層が整うと、面白い現象が起きます。
選手の「意識」を介さずに、フォームの安定感が増し、無駄な動きが自然と削ぎ落とされるのです。

結果的に、選手は自分の身体の動き(フォーム)に意識を向けなくても済むようになります。
「足をどう踏み込んで、手はこうして……」といった内側のチェック作業から解放され、脳の処理能力をすべて「目の前の敵」や「戦術」といった、純粋なプレーに向き合わせることができる。

身体への意識を忘れて、ただプレーに没頭する。
その「自由」こそが、パフォーマンスを最大化させるための鍵だと僕は考えています。

(まだ下に続きます)

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身体が発する「小さなアラート」に耳を傾ける

とはいえ、自分で意識できない第2層のズレを、どうやって見つければいいのでしょうか。
自分自身の脳のプログラムを直接覗き見ることはできませんが、「動きの出力」を細かく観察すれば、エラーのサインはあちこちに見つかります。

例えば、何気なく足踏みをしたときの「左右の音」の違い。歩いているときの腕の振りの大きさや、頭のわずかな横揺れ。これらはすべて、自分一人では原因を特定しにくい第2層のバグが、動きの端々に漏れ出している状態です。

僕がサポートしている選手の中には、「サッカーのセンタリング精度がわずかに落ちてきた」といった、競技特有のわずかな感覚のズレから不調を察知する人もいます。こうした「日々の動きの違和感」を、単なる気のせいで片付けず、自分の身体が発する「SOS」として捉えられるかどうかが、パフォーマンスを分ける境界線になります。

才能を嘆く前に、自分の仕組みを「アップデート」せよ

こうしたわずかなズレは、どれほど根性で練習(第4層)を積んでも、筋力(第3層)を鍛えても解消されることはありません。むしろ、狂った設定のまま出力を上げれば、いつか必ず物理的な身体(第1層)が悲鳴を上げることになります。

身長や骨格といった「身体のつくり(第1層)」は変えることができません。しかし、無意識のコントロール(第2層)を整え、パワー(第3層)を最適化し、高い作戦(第5層)を練ることは、すべての選手に等しく開かれたチャンスです。

「漠然と頑張る」のをやめ、自分の身体という精密な仕組みを、自ら「お手入れ」し、「アップデート」していく。その視点を持てたとき、あなたは才能の壁を突き抜け、自分史上最高の動きという「自由」を手に入れることができるはずです。

Body Tuning Labo K7では、この「第2層のチューニング」を専門的に行っています。もし、自分の身体のどこに「通信エラー」が起きているのかを知りたいと思われたら、エンジニアがシステムを保守するように、あなたの身体を精密に調整させていただきます。

自分の身体を、一つの「システム」として捉え直してみる。
その視点を持つだけで、明日からのトレーニングの見え方は、きっと変わってくるはずです。

今この場で足踏みをしてみて、左右の足音を聞いてみてください。

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この記事を書いた人

Body Tuning Labo K7”代表の走尾(はしお)です。
人の身体、特に上昇志向の強いアスリートの動き具合を調整していくのが一番得意。
ほぼ100%の人が「自分の身体はちゃんと動いている」と思っているので、もっといい世界があることをお知らせしたい。
元コンピューターハードウェア設計エンジニア。たぶん、異色の転職組で人の身体への接し方が違います。それが結果の違いも生みます。

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