久々に治療室から外に出て講習会のようなものをやってきました。「ような」っていうのは、僕開催の人にいろいろ教える系は堅苦しいものではないので。

開催場所は、川口市のcraze climing gym(クレイズ)さんです。
今回の講習会は、こちらからジムのオーナー様にオファーして開催となりました。crazeのオーナー様が元国体選手でケーセブンのお得意様でもあります。そのため、ケーセブンのボディメンテナンスへの理解が深く、crazeのお客様には絶対にプラスになるので是非ということで。まわりまわって、ジムのメリットにもなりますしね。
アスリートにとって、身体についての知識が大切だと思う理由
今まで20年以上にわたって競技種目も年齢層も様々な、多くのアスリートを見てきました。そして、彼ら彼女らに共通していることがあります。
- ほとんど自分の身体についての知識がない
- 量と精神論に頼った練習が多い
- スポーツ科学という言葉が世の中に普及し始めてはいるが、現場にはなかなか浸透していない
- スポーツ科学という言葉が普及する以前に学んだ指導者がまだまだ多い
量と精神論に頼る練習でも構いません。スポーツは参加する人が自分の考え方で好きなように活動すればいいです。ただ競技スポーツとなると自分が上手くなることよりも、相手より強くなる必要があります。
となると、自分の思うことだけでは目標を達成できない可能性がでてきます。
アスリートとは競技スポーツをする人たち。とすれば、相手と競う人たち。ということは、「相手には負けたくない」という気持ちがベースにあるはず。でも、そのための知識が欠如しているし、必要とも思っていない。それって不幸だと思うのです。強くなれないしね。
最終的に相手に勝ち続けられる人はたったの一人。優勝者のみです。そこに少しでも近づこうと思えば、身体についての知識は絶対に必要です。
話のテーマと内容
今回のテーマは「人の身体の不思議を知る」です。
一般の身体についての知識がない方々にとって、僕らのような専門家が持っている知識や経験は不思議でしかないと思います。僕が施術で毎日やっていることでも、初めて体験される方には「魔法のようだ」といわれることが多々あります。僕らの普通が、一般の方の魔法。
でも、僕が魔法使いなわけじゃないです。今まで医学の世界で培われてきたものや、僕が工学的な考え方で構築してきたものを駆使しているだけ。今回はこの辺の話をしました。
内容をリストアップしてみると、
- 運動の仕組み
- 反射と随意運動
- 左右差
- 運動プログラム
- 指と身体の連携
こんな感じ。実験的なものを含めたので、結構楽しんでいただけたと思います。
これらのことがわかってくると、やっていいこと、悪いことなどが何となくわかるようになります。やっても効果のないことはともかく、やったら逆効果になるものもあるので、こういう知識は最低限欲しいところです。
運動の仕組み
身体って、どうやって動いているのか。
こういう質問をすると、多くの人が「脳から筋肉に命令が出る」的な回答をします。この回答は、間違いじゃないんですけど半分足りない、そんな感じです。
じゃ、残りの半分は?
反射と随意運動
身体が動くときには、大雑把に分けると「反射」と呼ばれるものと「随意運動」と呼ばれるものがあります。スポーツをするときには、この両方が効率よく働く必要があります。
一般的に、トレーニングや練習っていうのは随意運動に効果があります。じゃ、反射は?
ケーセブンでの施術は、反射の起こる感度を上げていくこと。反射の起こる感度を上げると、自分の外からの刺激に対しての反応速度が上がることになるので、「キレが良くなる」という表現につながります。僕はアスリートにとっての基本事項として、かなり重要視しています。
左右差
身体には必ず左右差があります。
いろんな左右差がありますが、今回の内容は「力の出方」についての左右差。これ、ほとんどの人が気付いていません。気づいていないにもかかわらず、この左右差が理由になっている怪我の発生頻度はかなり高いです。個人的には9割近くがこの左右差に起因していると思っています。
実際に、参加者全員に力の出方には左右差があること、恒久的には無理でも一旦は修正できることを体験していただきました。
運動プログラム
一般的に医学界では頭の中に運動のブログラムがあるという考え方をあまりしないと思います。今までこの仕事をしてきて聞いたことはないです。(NLP;神経言語プログラミングっていうのはありますね)
多分元々コンピューターのエンジニアだった自分の独特な発想というか、考え方です。
で、頭の中には運動プログラムというのがあって、どのタイミングでどの筋肉にどのぐらいの強さで動けという命令をだします。
これはその人ごとに生まれてから今までの人生経験で作成されています。なので、大筋は同じでも人によって微妙に違ってきます。箸の持ち方、鉛筆の持ち方、走り方や歩き方などの違いはこの運動プログラムの違いによるものです。
この運動プログラムには僕なりの理想像があって、そこから外れている選手がいると理想像に近づけるような動きを提案します。もちろん強制ではないです。で、受け入れられる場合には練習をし、習得の努力をしてもらいます。
あと、怪我をするとプログラムがバグることがあります。なので、この修正作業も必要に応じて行います。いわゆる治療だったりメンテナンスですね。
運動プログラムの修正には時間がかかるものもあるし、その場で簡単に修正できるものもあります。簡単にできる事例をその場で実験的にやってみました。とある参加者に壁に登ってもらい、その動きを修正してスムーズに登れるように変えるというもの。
これはうまくいきました。うまくいかなかったらどうしようと、
最初はちょっとビビりましたがうまくいって良かったです。
指と身体の連携
指と身体の連携は運動プログラムの一部です。ボルダリングにおいてはとても重要なので紹介しました。
手の指と、腹筋や背筋が連動する話です。指によって腹筋と連動するのか背筋に連動するのかが変わってきます。つまり場面によってはホールドを取る指を変えると効率が変わるということ。もちろんいつでもいい状態で取れるとは限らないので、必ずっていうことではないです。
講習後に試してくださった方もいて、だいぶパフォーマンスが上がったと報告をいただきました。
登る効率が変わるので、考え方も変わってくるかもしれませんね。
実践(実験)編
話をした中で、
- 左右差(力の出方)
- 運動プログラム
- 指と体幹の連携
- 部分利用と全体利用の違い
- 登攀動作の修正
に関しては、実験的に実際に身体を使って体験をしてもらいました。やっぱり、聞いただけより見る、見るだけより受けてみる方が理解が深まりますね。
世の中の大多数の方は、「その場でちょっといじったくらいで、身体は変わるものではない」と思っています。それが、その場でどんどん変わるので、驚きと面白さがあったようです。
やっぱ、百聞は一見に如かずですね。
その他
身体の不思議を体験していくと、段々と質問が出てきます。
「ストレッチやマッサージはどうなのか?」という質問も受けました。
結論的には、やり方によっては、身体を動きやすくするかもしれないし、逆に動きにくくするかもしれないことを、実験をしながらお伝えしました。
大抵、99%といってもいいほど、ほとんどの方のストレッチやマッサージは身体のパフォーマンスを下げます。なので、試合や練習前のストレッチやマッサージはパフォーマンスを上げるようなやり方をしないとマイナス面が強いです。
この辺も、実体験していただいて、理解してもらえた感じがします。
ちなみに、ストレッチにしてもマッサージにしても「気持ちよさ」を基準にやると、大抵マイナス方向で身体に影響を与えます。お気を付けください。
まとめ
今回はボルダリングジムでの開催だったので、クライミングの人たちばかりでした。一応、クライミング向けの話も盛り込んではいましたが、どんな競技種目でも人間の身体を使っている以上基本は同じです。
以前、いろんなスポーツ関係者の方から、自分で体験していない競技をちゃんとみられるのか?みたいにいわれたことがあります。僕的にはそれは全然問題なくて、僕は競技種目を見ているわけではなく、ベースになっている人間の身体として、どう力を発生させてどう身体の中を伝達させているのかを見ています。なので、競技種目は関係ないし、初めてみる競技種目でも大抵は対応できています。
そういう観点から身体の動き具合を見たときに、選手たちはもっと自分の身体のことを知って、その上でどう動かしていくのかを考えたら、もっとパフォーマンスが上がるのにと思うわけです。
過去や現在にメンテさせていただいている選手で、そこまでの理解をしようとした選手はほんの一握り。みんな、自分の可能性を最大限には引き上げようとしていない感じで、なんかもったいないです。逆にいえば、自分の身体をもっと理解しようとしたら、他の選手に対してその部分はアドバンテージになるはず。
ということで、上を目指したいアスリート向けに、基本となる身体の知識を授ける講座を引き受けます。ご興味あるというか強くなりたいチームの方は是非アクセスしてください。