トレーナーの仕事は試合の前に終わる! [コンディショニングは試合前か、試合後か]

先日、所属する接骨師会から「駅伝大会で選手サポートのブースを出すのでボランティア募集中」という案内をいただきました。

以前はこうしたブースを自分で開催したこともあります。最近はあまり現場に出ていなかったこともあり、久しぶりに足を運んでみることにしました。

会場に到着すると、すでに選手たちは走っていました。レースはもう始まっていたのです。
ブースに向かうと、今回の目的は【アフターケア】とのことでした。レース終盤の時間帯に合わせて集合時間が設定されていたようです。

そのとき、ふと思いました。

僕の中で、コンディショニングとは「前」に行うものです。
試合やレースの前に身体を整え、神経系の感度を上げ、出力や動きのムラをなくす。
その状態でスタートラインに立つ。
そして、選手の勝利や好成績につながる身体を作る。

それが当たり前だと思っていました。

だから、「この場で自分にできることはあるのかな」と考えました。

戸惑いというより、自分の前提が静かに揺れた感覚でした。

コンディショニングとは、後なのか。
それとも前なのか。

その問いが、頭の中に残りました。

トレーナーの役割とは何か

スポーツ現場におけるトレーナーの役割とは何だろう。

僕が考えるに、大きく分けると二つあると思います。

  1. 試合が始まる前に、身体が最も動くように調整する。
  2. 試合が終わった後に、身体に起こったこわばりや緊張を解きほぐす。

この二つの役割があると思います。

これまで現場に参加して、監督から「どちらをやってほしい」と明確に指示をされたことはありません。
つまりトレーナーの裁量で、どちらを選ぶこともできるのだと思います。

僕の場合は一つ目。
試合が始まる前に身体をいい状態に作ることをしています。

だから試合開始のホイッスルが鳴ったところで、僕の仕事は終わりになります。

ただ一般的には、試合が終わった後にアフターケアを提供する形が多いようです。
今回の駅伝大会もこちらのタイプで、トレーナーの集合時間自体がレース開始後に設定されていました。

では、この二つについて少し考えてみたいと思います。

僕は試合前に身体を調整する立場なので、そちらを中心に書いてみたいと思います。

試合前のコンディショニング

ここで言うコンディショニングとは、試合前に身体の状態を整えてパフォーマンスを最大化するための調整のことです。

僕がトレーナーとして現場に入る目的は、
選手に少しでもいい成績を出してもらうこと。
そして勝ってもらうことです。

そのために、試合の前に身体をできるだけ良い状態にしておきます。

身体全体の神経系の感度を上げる。
そして動きのムラをなくす。

これによって身体は、より正確に、そして速く動くようになります。

アフターケアという役割

試合後のいわゆるアフターケアは、マッサージやストレッチサポートが多いと思います。
今回のボランティアブースでも、マッサージが主な方法でした。

レースが終わり、緊張がほどけた状態で、
張りのあるところをゆったりマッサージしてもらう。

それは気持ちがいいことだと思います。
そして必要な場面もあると思います。

ただ僕の場合は、試合前の調整に力を注ぎます。
調整しきった身体は、試合後に大きなアフターケアが必要になることはあまりありません。

僕自身は、その状態のほうが選手向きなのではないかと思っています。

モータースポーツの例

僕はバイクや車が好きです。

例えば車のレースでは、試合会場に数日前から入り、コースに合わせたテストとセッティングを行います。

車をどんな状態にしたら速くなるのか。
どうすれば好成績につながるのか。

それを考えながら、細かくセッティングしていきます。

人間と車は違うと言えば違います。
ただ、レースでは「道具である車を最高の状態にしておく」という努力が徹底して行われます。

オイルを交換する。
ネジをきちんと締める。
タイヤの向きを調整する。
その他にも細かなセッティングを積み重ねていきます。

ところが人間の場合、自分の身体という道具の調整は、そこまで行われていないことが多い気がします。

試合や練習の前に軽い運動やジョグをする。
エネルギー補給をする。

そのくらいで終わっていることが多いのではないでしょうか。

痛みがない=問題がない、ではない

では、多くの人が思うであろう、

「自分は身体に痛いところがないから、事前調整は必要ない」

ということについて書いてみたいと思います。

これまでスポーツ現場だけでなく、治療院でも多くの選手の身体を調整してきました。

その中で一度もなかったのは、
完璧な状態で調整の必要が一つもない選手との出会いです。

選手本人は問題を感じていない。
でも僕たちプロの目から見ると、身体はまったく完璧な状態ではありません。

多くの選手が思っているのは、

「身体に痛みがないから問題はない」

ということです。

でも僕が思っているのは、

「痛みがない=問題がない」ではない

ということです。

身体が壊れる仕組み

身体が壊れる原理はシンプルです。

一つの場所に負荷をかけ続けること。

これです。

これは身体に限った話ではありません。
機械でも同じです。

身体のどこか一部に負荷が集中していても、
壊れるまでは本人は気づきません。

痛みは、最後に出てくるサインです。

僕がやっていること

僕がやっていることは、
身体の一部に負荷を集中させてしまう原因を取り除くことです。

そうすると身体全体が均等に使われるようになります。

すると一つひとつの筋肉が出す力は少なくなります。
でも身体全体で見ると、出せる力は大きくなります。

これが、試合の前に身体を整えるということです。
そして僕が大事だと思っているポイントでもあります。

練習の質を上げるためのメンテ

もし競技スポーツに参加していて、
もっと自分の能力を上げたい、強くなりたい、レベルの高いところに行きたいと思っているのであれば、参考になる話があります。

以前、とある競技で日本チャンピオン級の選手のメンテナンスをしていたことがあります。

その方はこう言っていました。

「ここに来てメンテをするのは、試合のためじゃない。
日常の練習の質を上げるためです。

練習量はもう目一杯やっている。
だから練習量でライバルと差をつけることはできない。

差がつくのは練習の質。
だからメンテに来るんです。

試合の前だけメンテをするようでは、勝てない。」

実は同じ時期に、別の競技で日本一を目指している選手も来ていました。
その選手も、ほとんど同じことを言っていました。

練習や試合の前に身体を万全にせず、
終わった後にだけメンテをする。

あるいは試合の前だけメンテをする。

それでは、なかなか強くなるのは難しいのだと思います。

僕がやりたいこと

僕自身は、選手の競技活動に少しでも貢献したいと思っています。

ここで言う貢献というのは、
選手が強くなったり、試合に勝ったりすることの手助けをすることです。

だとすれば、最も効率が良いのは、
普段の身体をきちんとした状態にしておき、練習の効率を上げてもらうことです。

たまたまメンテナンスをさせてもらった日本トップクラスの選手たちには、
この考え方がちょうどフィットしていたように思います。

さらに言えば、人の身体についての知識も増やしてもらいたいと思っています。

何も知らず、考えず、ただメンテナンスで身体を整えて練習するよりも、
自分の身体のことを少しでも知っておいたほうが、何かあったときに応用が効きます。

練習の中でも、より効果的な工夫ができるかもしれません。

だから僕は、身体のメカニズムもできるだけ話すようにしています。
実際に身体を動かしながら体験してもらう。
そのほうが理解が早いからです。

試合が終わった後に身体を整える場所ではなく、
日常の練習の質を上げるために身体を整える場所。

僕はそんな形で選手のサポートができたらいいと思っています。

今回のボランティアブースでも、
事前準備の大切さを少しでも知ってもらえるように、
より質の高い技術を提供できるよう精進していきたいと思います。

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この記事を書いた人

Body Tuning Labo K7”代表の走尾(はしお)です。
人の身体、特に上昇志向の強いアスリートの動き具合を調整していくのが一番得意。
ほぼ100%の人が「自分の身体はちゃんと動いている」と思っているので、もっといい世界があることをお知らせしたい。
元コンピューターハードウェア設計エンジニア。たぶん、異色の転職組で人の身体への接し方が違います。それが結果の違いも生みます。

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